バスガイド「私」の付知発見。今回は秋の味覚【ごへいもち】

こんにちは。岐阜県は9月末まで緊急事態宣言中なので今回も散策ではない情報をお届け。
今の付知はといいますと・・山々の秋の深まりがだんだんと近づいてくるのを感じるものの山が色づくのはもう少し先のよう。しかし「感じ取る秋」は身近になりました。特に。田んぼ独特の香りが薄れ、遠くの雨の香りもしなくなり、代わりに枯れ草が燻されたような土の香りに乾いた空気を感じるようになりました。そして空も。秋空の表現はいくつもありますが、よくいう「天高く馬肥ゆる秋」の通り、馬の食欲も増して肥え高く澄み渡った空の、本当に高く高くのかすむような雲の流れ。こんないい季節だと馬でなくとも肥えますよね。今年は朝晩の気温差が大きく秋の象徴「紅葉」が一段と美しく付知の山々を彩るでしょう。

紅葉真っ盛りの頃の付知

山野を眺めつつ食べたい秋の味覚

前回紹介した栗きんとんをはじめ、秋に旬を迎える食べ物を挙げれきりがありません。山近い付知ならではの味覚も多く、サルマイタケ(ニンギョウタケモドキ科はサルが舞い踊るほどおいしい)は地域外では入手が難しい味覚なのでいつでも足を運べるみなさんにはオススメですが季節が限られるとなかなか難しいもの(8月~10月)
そこで今回はお取り寄せで自宅でも手軽に作れるようになった「ごへいもち」をご紹介。

近年、架空の商店街を舞台にしたドラマでも話題となり全国的な知名度もあがった郷土料理。見掛けるとつい買ってしまうあたりソフトクリーム的な旅のお楽しみともいえます。どこからともなく漂ってくる甘い醤と胡麻が焼ける香りは、焼きおにぎりとも違う香ばしい匂い。それだけで小腹が俄然やる気をだしてしまいます。そのあたりが馬でなくても肥ゆる原因なのでしょう(笑)おいしいものがあれば馬でなくとも肥ゆるものなので天高く・はさておき「ごへいもち」を秋に紹介したのには理由があります。

「ごへいもち」

発祥も由来も諸説ありご当地ならではの伝統も伝承も数多くありますが、一般的に長野木曾谷・伊那谷・岐阜東濃・奥飛騨・愛知奥三河など主に山仕事が盛んな山間部の地方で古くから食されてきたと言われますが、発祥となると限定するのは難しく、中部地方山間部発祥と伝わる郷土料理として親しまれているという括りになるんでしょうね。
杣人をはじめとする山に携わる人々の安全を祈る祭りである「山の講」の前夜祭に食べられていたとも伝わり、そもそも山の神々に供えるものでもあったようです。

目を閉じてイメージ・・イメージ・・「御幣餅」「五平餅」

仕事柄(ガイドですから)色んな本やご当地の話、地元の方の情報など日々勉強するなかで、漢字としてどっちが正しいということはなく諸説ある由来の中から漢字があてられた・というのが私的にしっくり。
有力な説に「弊説」がありますので形を想像してみましょう。
①平らなわらじ型②丸い団子型。形はこれ!という決まりはありませんが、だいたい形はこの2つでしょう。食べやすさなどの理由からか観光地などでは団子型を多く見掛けますが、有力説では①のわらじ型になります。
山仕事の安全祈願・山の神が子沢山なことから子孫繁栄や家内安全・秋の豊穣に感謝する思い等と、神事全般で使われる御幣という神具に似ているから御幣に似た神様へのお供⇒ごへい餅・御幣餅とつながったようです。

画・私

もう一つの説「五平餅」には地方性があり杣人の五平さん(吾平さん、五兵衛さん)が潰して焼いたうるち米に味噌をぬって焼いたものが評判になったので名前をとって五平餅としたとも。

秋は五穀の実りに感謝

山は神聖な場所であることも多く、年に3回、1月2月3月の12日(16日の土地もある)は山の神と呼ばれる日で神様が木の本数を数えるためその日に山に入ると木に数えられてしまい帰れなくなるという・・山ならではの伝承のひとつですね。
ごへい餅が神々へのお供え物であったにしても、五平さんがヒットさせたにしても、諸説あるということが江戸の頃から庶民に広く馴染んできた証だと思います。各家庭でも秋の実りに感謝し新米をご先祖さまにお供えしました。
ごへい餅はハレの日のご馳走です。ワイワイと火を囲んで香ばしいごへい餅が焼けるのをまち皆でいただく。田舎の秋祭りを連想させる風景画のようですね。なので、ごへい餅の紹介は秋って決めてました。個人的には中山道六十九次の絵に描かれていないか探したくなるんだよね~。文化、芸術の秋らしく(笑)

余談ですが・・杣人と山の神々と付知

護山神社

ところで、付知は神宮と深い関わりがありまして・・
将軍家斉の江戸城西の丸火災に折、伐採を禁じられていた裏木曾の’’出の小路’’(いでのこうじ)から良質な用材を伐採調達したところ怪奇が頻発したため、尾張藩主斉荘が奥社を建立。その後木曾全山鎮守のため建てられた里宮が護山神社です。現在も20年に一度の遷宮の要となる御樋代(みひしろ)を納める地であり岐阜県経由の出発点であります。
○以前スタッフが研修で特別入山させていただいた際のレポートはこちら⇒付知ばあちゃんちスタッフブログhttps://tsukechi-kominka.com/blog/guesthouse/post-11753/
○護山神社については神仏に精通しているスタッフによる付知神社紹介はこちら⇒付知ばあちゃんちスタッフブログttps://tsukechi-kominka.com/blog/つけち日和(付知観光情報)/post-12316/

いよいよ秋の行楽シーズンをむかえます。個々の感染対策をしっかり行いながら少しずつ散策していきましょう。
いつかまた肺いっぱいのおいしい空気を楽しめる日が戻ってくるのをこころまちに・・

ではまたお会いしましょう。